2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、所蔵の小説を読み直しております。
今回は伊岡瞬「代償」。
2014年発表作品。
伊岡瞬は1960年生まれの作家さん。
デビュー10年目に書かれた本作において大きく世に名前を売ったかと。
物語は二部構成になっています。
第一部では暖かい家庭で不自由なく生活していた小学生の圭輔が、遠縁に当たる達也一家に関わったことから家族を失い過酷な思春期を過ごすことになる姿が描かれます。
第二部では長じて弁護士となった圭輔が、重犯罪容疑で逮捕された達也の依頼によりその刑事弁護を引き受けると云う法廷劇が展開されます。
物語の肝となるのは主人公・圭輔と同い年の達也が「絶対悪」として描かれていることです。
小学生の頃から身体的にも性的にも成熟している達也は狡猾に様々な犯罪に手を染めていることが示唆されます。
圭輔の家が火災に遭い両親が焼死した事故にも達也の影が・・・
お互い成長して圭輔は弁護士として達也と対峙することになるも、そこにも裁判を弄び圭輔を陥れる達也の巧妙な罠が・・・
いやホント、この達也って奴がマジでクソ野郎なんです。
何とかしてこいつを罰しなければならないと思いながら読み進めることになります。
法廷劇の末に待ち受ける結末は如何に。
払うべき「代償」とは何か。
ご一読してご確認ください。
達也一家が圭輔一家に侵食していく様は北九州監禁殺人事件や尼崎連続変死事件を彷彿させます。
報道を見る限り両事件とも首謀者は「絶対悪」と呼べる忌むべき存在ですよね。
ただ、多くの作家がこう云う「絶対悪」を主題にして物語を生み出します。
人は誰もがその内に悪魔を飼っている・・・
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では、また。