2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
今回はウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」。
1984年発表作品。
いわゆる「サイバーパンク」と呼ばれるジャンル作品の嚆矢にして最高傑作の一つ。
SFファンなら必読の一書。
物語の舞台はコンピュータによる情報網に覆い尽くされた世界。
「サイバースペース」が「電脳空間」と翻訳された最初の小説かと。
主人公・ケイスは特殊な電極を使って脳とコンピュータ端末を接続しサイバースペースでデータを盗んだり改竄することを生業とするハッカー(作中ではカウボーイと呼ばれます)。
ケイスがある計画に否応なく巻き込まれることによって物語の幕は開きます。
その計画を背後で操るのは自我を持ったAIで・・・と云った内容。
今でこそフォロワーによりこのジャンルの作品は数多生み出されていますが、1980年代半ばにこの設定を用いてこの物語(近未来感に溢れかつ非常に文学的)を描けたことは驚嘆します。
作中に登場するガジェットをつらつらと書き連ねることはしませんが、様々なテクノロジーに関するアイデアが違和感なく注ぎ込まれています。
最近かなり話題になっているAIの危険性と可能性をこの時点で作品モチーフにしている著者の慧眼は賞賛されて然るべきかと。
本作の映像化プロジェクトを起点に映画「マトリックス」は完成しています。
サイバーパンクの傑作小説が別の形でサイバーパンクの傑作映画に結実したのですね。
タイトルの「ニューロマンサー」の意味は物語終盤で判明しますのでご一読してご確認ください。
日本のサイバーパンクの代表作「攻殻機動隊」の作者・士郎正宗も同時期に似た着想を得ているのは歴史の必然か。
では、また。