2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
今回は宮部みゆき「理由」。
1998年発表作品。
直木賞受賞作。
今や女流作家の大御所とも言うべき宮部みゆき先生。
本作により直木賞を受賞してその地位を揺るぎないものにしたかと。
物語の中心となる舞台は東京都荒川区にある高層マンション。
2025号室で中年男女と老女の惨殺死体が発見され、地上にはベランダから転落したと思われる若い男の死体が。
ところがその四人の死者は2025号室に住んでいるはずの家族ではないと言う驚きの事実が。
物語はドキュメント的手法で構成されており、事件に関係する当事者の証言を元にして第三者によりその詳細が浮き彫りにされて行きます。
バブル崩壊後の時代が物語の背景となっており、「タワーマンション」「競売」「買受人」「占有屋」と言ったワードが事件の真相のキーとなっています。
登場人物が多くある種の群像劇とも言える作品なのですが、それぞれの人物がほんと詳細に掘り下げられて描かれており、ドキュメント的叙述も相まって実在の人物のように感じられます。
それぞれがそれぞれの「理由」によりその時その場所に存在する・・・
最近の都内のマンション価格高騰のニュースを聞くにつけ、この物語のような話が実際に起きるのではないかと少し思ったり。
現在にも通じる本作、ご一読を。
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では、また。