2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
1992年発表作品。
山本周五郎賞受賞作。
宮部みゆき先生は1960年生まれで自分よりだいぶ上の世代の作家さん。
今や日本を代表する大御所女流作家ですが、30年以上前に書かれた本作によって広く世間に認知されたかと。
物語の舞台は90年代初頭の日本。
職務中の怪我により休職中の刑事・本間は、亡くなった妻の遠縁の男・栗坂から婚約者・関根彰子の行方を探してほしいと依頼されます。
彰子はクレジットカードを作成しようとした際に過去の自己破産の事実が栗坂に露見したことを機に自ら失踪したとのこと。
渋々ながら彰子捜索に乗り出した本間は、彰子の過去を追う過程において「関根彰子」と名乗っていた人物が全くの別人で、彰子の身分を乗っ取っていたと言う驚愕の事実に辿り着くことに。
ここから本間は真の彰子(身分を乗っ取られ生死不明)と彰子を騙る謎の女の2人の姿を追うことになると云うのが筋書きになります。
本間が謎の女の正体に迫る過程は非常にスリリングで物語に引き込まれます。
物語の背景には、当時問題となっていた若年層におけるカード破産があり、それ以前のサラ金による過酷な取立てに起因する悲劇があります。
凄惨な人生を送って来た者の「選択」が物語のキーとなっています。
本作は30年以上も前の作品であり、現在はカード破産問題や借金について法整備もされ救済策も施されていることからそのまま現状に当てはまるものではありません。
しかし、当時の悲惨な状況がよく理解できる社会派サスペンス作品の傑作であることは間違いありません。
現在でもカード破産問題はありますし、若年層だけでなく「下流老人」なる言葉があるように老年層で増えている問題でもあります。
現在にも連なる本作、ご一読ください。
では、また。