2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
2005年発表作品。
自分と同世代の作家では一番お気に入りの伊坂先生。
デビュー作から順に読み直しております。
それまで緻密でモザイク細工のようなかっちりした作品で評価を得ていた著者が、あえて答えのないような物語に仕立てた本作。
物語はある兄弟が主人公となっており、兄を主にした『魔王』と、その5年後を描く弟が主となる『呼吸』の二篇で構成されています。
特殊な能力を有する兄弟(この辺りは伊坂らしい設定)が、あるカリスマ政治家と対峙する姿が描かれています。
作品のモチーフになっているのはファシズムや憲法改正や国民投票と言ったものなのですが、そこに特段の政治的主張がある訳ではなく、大きな流れの中でいかに個人は振る舞うべきなのか又は振る舞えるのかと云うのがテーマになっているのかと。
改めて読んでみると非常に示唆に富んだ作品となっており、その後の日本を予見していたようなところもあります。
後年本作の続編と言える「モダンタイムス」と云う作品が書かれています。
果たして「魔王」とは誰なのか。
ご一読して考察してみてください。
著者の前作「死神の精度」の死神・千葉が本作にもちらりと登場します。
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では、また。