2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
今回は伊坂幸太郎「死神の精度」。
2005年発表作品。
日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
同世代の作家では一番お気に入りの伊坂先生。
デビュー作から順に読み直しております。
本作は「死神」を主人公に据えた連作短編集。
死神は対象者を一週間調査してその死(寿命や病死は除外)の可否に判断をくだし、「可」の場合に対象者は八日目に死を迎えると云うのが作中のルールになっています。
死神達はある組織に所属しており、業務のように対象者の調査を行います。
調査のため対象者の近くに様々な人物を装って登場する死神の多くはやる気のない会社員みたいな感じで適当な調査をして基本的に「可」の判断をくだします。
主人公の死神・千葉(調査対象者により姿形は変わっても名前は不変)は他の同僚死神よりは真面目に調査に当たるものの、常に人間を冷めた目で見ています(数千年も当該業務に当たっているからかw)。
本作には六つの短編が収録されており、対象者の調査過程でそれぞれの人生が浮き彫りにされ、千葉によりその生死の可否が判断されます。
組織の怠慢で調査対象者の詳細は死神達には明かされておらず、千葉も対象者の背景・実情を探りながら調査に当たるところがミステリー仕立てにもなっており興味深く読み進められます。
各短編は少しずつリンクしており全部読み終わるとあっと思わされますよ。
昔から創作物のありふれたモチーフである「死神」を伊坂がどう料理したか楽しめる短編集となっています(死神の特徴の一つが人間の創る音楽に恍惚となるところなんかは伊坂らしい設定w)。
後年「死神の浮力」と云う続編が書かれています。
人気シリーズとなった本作、ご一読ください。
では、また。