2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
2009年発表作品。
米澤穂信は1978年生まれで自分とは同世代の作家さん。
ミステリーを得意とし、2021年には「黒牢城」で直木賞を受賞してますね。
本作もミステリー・マニアと呼ばれる著者らしい作品。
物語の語り部は経済的理由から大学を休学し伯父の営む古本屋に居候している青年。
その古本屋を訪れた女性から死んだ父親が書いた五つの短編小説を探して欲しいと云う依頼を受けることから物語の幕は開きます。
死んだ父親の遺品を整理しているとその五つの短編小説の結末となる一行が書かれた原稿用紙が見つかり、五つの短編小説は全てが「リドル・ストーリー」と呼ばれる「結末のない物語」として世に出ていることが本作の骨子になります。
語り部である青年はその五つの「リドル・ストーリー」の調査を進める内にその短編小説が書かれた背景とその意味に辿り着くと云うのが筋書きになります。
米澤穂信らしい凝った構成になっていますねw
「リドル・ストーリー」と云うのは「謎物語」とも呼ばれ、その結末が読者に委ねられているものです(芥川龍之介の『藪の中』が代表例)。
本来結末がないはずの謎物語にその結末を用意し、その謎物語自体を要素にして大きなミステリーを仕立て上げると云う著者の技量・力量が伺える佳作となっています。
また本作は「ロス疑惑」と呼ばれる実際に起きた事件を下敷きにしています(ある程度の年齢の方なら記憶にありますよね)。
本作とロス疑惑のミステリーを比較しながら読むのも一興かと。
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では、また。