2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
今回は宮部みゆき「蒲生邸事件」。
1996年発表作品。
日本SF大賞受賞作。
社会派ミステリーをはじめ、SF・ファンタジーから時代物まで幅の広い作風の大御所女流作家の宮部みゆき先生。
本作は初期宮部を代表するSF作品。
所謂タイムトリップものでSFでも古典と言っていいジャンルをどう宮部みゆきが料理したかを楽しめる作品です。
予備校受験のため上京していた青年・尾崎孝史はホテル火災に巻き込まれ、タイムトリップ能力を持つ男・平田に命を救われることになるも連れて行かれたのは昭和11年2月26日の帝都・東京。
元陸軍大将・蒲生憲之の屋敷に住み込むことになった尾崎と平田はかのニ・ニ六事件を目の当たりにすることに。
戒厳令によってある種密室となった蒲生邸において蒲生憲之は拳銃自殺を図り死亡するもその拳銃は行方不明に。
蒲生邸に住まう人々の誰かが犯人なのかと云うミステリー要素を踏まえ、タイムトリッパーの悲哀や屋敷の若い女中に寄せる尾崎の恋心なども交えて物語は展開して行きます。
果たして蒲生大将は殺害されたのか、なぜ平田はこの時代をタイムトリップ先に選んだのか、そして尾崎は現代に戻ることが出来るのかなどが読みどころになります。
SFミステリーにジャンル分けされる小説ですが、物語の主人公は「歴史」そのものであり、歴史を評価するとはどう云うことなのかを問いかけている作品かと。
ちなみに蒲生憲之は架空の人物です。
関連過去記事↓
では、また。