2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
今回は伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」。
2003年発表作品。
吉川英治文学新人賞受賞作。
伊坂作品はほぼ発表順に読み直しております。
物語の舞台はいつも通り仙台。
大学入学のために関東から引っ越して来た椎名は、入居したアパートの隣人・河崎に挨拶し知り合うことに。
椎名はいきなり河崎に「広辞苑」を奪うために本屋を襲うことを持ちかけられて・・・と伊坂作品らしく突拍子もない感じで物語の幕は開きます。
椎名を軸とする現在パートと、2年前に起きた「連続ペット殺し事件」に纏わるパートが交互にカットバック形式で語られて行く構成となっています。
物語序盤はある「嘘」によって読者はミスリードされる感じになるのですが、現在パートと過去パートで語られる内容から次第に事態の全貌が浮かび上がって来ます。
過去に起きた悲劇と現在起きている事象との関係が明らかになった時、何とも言えない感傷を覚えることになるかと。
ボブ・ディランの曲が物語の一つのキーになっており、物語の最後に本作のタイトルの意味が判明します。
ちなみに椎名は、伊坂作品「陽気なギャングが地球を回す」の登場人物・響野の奥さんである祥子さんの甥っ子と云う設定です(本作中それとなく描写がありますが、本筋とは関係ありません)。
ある種の「青春物語」の佳作と言える本作、ご一読を。
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では、また。