2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直しております。
今回は桐野夏生「OUT」。
1997年発表作品。
日本推理作家協会賞受賞作。
桐野夏生は1951年生まれで、自分より二世代は上の女性作家さん。
女性を主人公にした強烈な物語に圧倒されることが多い作家さんです。
「柔らかな頬」で直木賞を受賞してますね。
本作「OUT」は著者の名を世に広めた出世作。米国エドガー賞にノミネートされたことも話題になりました。
物語の舞台は東京郊外。深夜の弁当工場のパートで働く世代の違う4人の主婦はそれぞれに家庭の問題があり、鬱屈した思いを抱えて生きています。
その中の1人が、クラブの女に溺れて闇カジノで借金を作った夫を発作的に絞殺してしまうことにより物語の幕は開くことに。
4人はパートでの知り合いと云うだけの繋がりであったのに、それぞれの事情からその死体をバラバラにして捨てると云う凶行に及ぶことになります。
友情ではなく負の力による結びつきだったためその結束は容易に解け、バラバラ死体も1人の愚行から簡単に発見され4人は窮地に。
しかし事件当日に闇カジノの経営者が絞殺された夫に暴力を振るっていたことが発覚し、警察の目はその闇カジノ経営者に向かい窮地を一旦脱することになります。
ところが、ある事情から4人の凶行を嗅ぎつけた男が4人に接触して来て、事態は更なる混沌へ。
そこへ証拠不十分で釈放された闇カジノの経営者が誤認逮捕により全てを失った恨みから4人を付け狙うことになり物語は加速して行きます。
なかなかに凄い物語で、一気に引き込まれてしまいます。
特に4人組主婦のリーダー格である女性のそれまでの経験や家庭事情から紡ぎ出される感情の描写が印象深いものとなっています。
また、4人を付け狙う闇カジノ経営者がめちゃくちゃヤバい奴で、その常軌を逸した行動に驚愕します。
最終的にこの物語は「解放」の物語となっています。
タイトルのOUTが意味するもの・・・
ぜひご一読ください。
では、また。