セミリタイア始めます。アラフィフ独身男のブログ。

2022年3月末に国家公務員を早期退職してセミリタイア生活に入った独身おっさんの日記。

セミリタおっさんの再読小説⑦奥田英朗「サウスバウンド」

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2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直してます。

今回は奥田英朗「サウスバウンド」。

2005年発表作品。

奥田英朗は1959年生まれで、自分よりだいぶ上の世代の作家さんです。

直木賞を受賞した「空中ブランコ」のようなユーモアたっぷりのものからシリアスなものまで、良質な作品を書き続けているかと。

本作「サウスバウンド」もユーモア溢れる傑作となっています。

本作は、元過激派で伝説の闘士である父親にその一家(母親・長女・長男・次女)が翻弄されると云う物語です。

第一部は東京・中野が舞台。第二部はある事情から一家が父親の故郷である沖縄・西表島に引っ越すことになり、そこが舞台となります。

本作は、一家の小6の長男の成長物語(ビルドゥングスロマンと呼ばれるものですね)であり、彼の視点から描き出される事態を読者は見守る感じになります。

元過激派の父親が活躍する話ではあるのですが、変に思想的な押し付けはなく、彼自身が内ゲバにより左翼には愛想を尽かしており、かといって「官」に与するのは良しとしないと云うスタンスで謂わば自由人として振る舞います。

その振る舞いに一家や周りの人間は翻弄されてしまうのですが、言動には一本筋が通っておりどこか痛快なものであることから大笑いしながら読み進められます。

第一部は東京・中野での長男の学校生活が主に描かれます。父親の振る舞い(小学校の先生に論戦をふっかけるやら、納税督促の市役所職員に食ってかかるやら)に苦悩したり、歳上の不良と対決したり、淡い恋があったり、大切な仲間との別れがあったりと。

中野と云う街は、自分が通っていたお店があることから個人的に思い入れがあり、登場する風景も目に浮かぶのでそこも楽しめました。

第二部は沖縄・西表島でのリゾートホテル建設反対運動に図らずも一家が巻き込まれる話になります。

一家は西表島石垣島を経由して向かうのですが、自分は石垣島も好きな場所なので、そこでの描写を読むだけで心が浮き立つ感じです。

西表島石垣島からなる八重山諸島琉球王朝から搾取されていた歴史も物語の背景として取り上げられており、なかなか歴史の勉強にもなります。

第二部からは母親(実は元過激派)や長女(実は父親が違う)も活躍するようになり、一家の物語となって行きます(幼い次女も頑張ります)。

中野の都会の喧騒と西表島大自然とのコントラストを背景に、どこであっても揺るがない家族の強い絆が描かれており、読後感は爽やか。

奥田英朗の力量を実感する傑作となっています。

機会あればご一読を。

では、また。

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