2022年4月からセミリタイア生活に入り、時間が出来ましたので蔵書の漫画を読み直してます。
手塚治虫の「鉄腕アトム」のエピソード『地上最大のロボット』を原作にして浦沢直樹が新たに描き出した本作。
漫画を原作に漫画を描くと云う斬新な手法ですが、巨星・手塚治虫とヒットメーカー・浦沢直樹だから許された企画なのかと。
自分はおっさんですが、世代的に「鉄腕アトム」をオンタイムで読めたほどの年齢ではなく、アニメもリメイク版を見ていた世代ですw
手塚治虫に関しては後追いで有名な作品(「ブラックジャック」「火の鳥」「アドルフに告ぐ」「ブッダ」など)を読んだくらい。
原作である『地上最大のロボット』は未読なのですが、それでも本作は十分楽しめました。
原作では脇役であるユーロポールのロボット捜査官・ゲジヒトを主人公にして、彼が世界最高水準の一体であるスイスのロボット破壊事件及びロボットの権利擁護団体の幹部殺人事件の捜査に乗り出すことで物語の幕は開きます。
事件はゲジヒトを含む世界最高水準の七体のロボットを破壊することが企図されていると判明し、その一体が日本のアトムとなっています。
そして事件の背後には、その七体のロボットが過去に紛争解決のために介入した中央アジアのとある国が(この辺りは現実の湾岸戦争における欺瞞が下敷きとなっています)。
事件の犯人である「PLUTO」の正体は何なのか、その黒幕は誰なのかといったミステリー要素を孕みながら物語は進んで行きます。
少し複雑な物語なのですが、とにかく浦沢風に描かれたアトムやウラン、お茶の水博士、天馬博士を見るだけでも楽しめます。
手塚治虫の「鉄腕アトム」が本質としていた、ロボット(AI)は感情を持つことができるのかとか、人間を定義するものは何であるのかと云った哲学的テーマについては本作でも当然追求されており、作品に深みを与えています。
ご一読を。
では、また。