2022年4月からセミリタイア生活に入り時間が出来ましたので、蔵書の小説を読み直してます。
今回は高野和明「ジェノサイド」。
2010年発表作品。
高野和明は1964年生まれで自分より一世代上の方。デビュー作「13階段」から注目している作家さんです。
物語の時代設定はアメリカがイラクに侵攻した直後の2000年代前半。
人類滅亡のシナリオを研究し1975年に報告された「ハイズマン・レポート」にあるシナリオの一つである『アフリカに新種の生物出現』をアメリカの情報機関が察知したことから物語の幕は開くことになります。
この「新種の生物」を巡り、ワシントンD.C.でのアメリカ合衆国政府首脳、コンゴ民主共和国での傭兵部隊(アメリカ合衆国大統領より発動された機密作戦実行部隊)、東京で薬学を専攻する大学院生の動きが同時並行的に描かれていきます。
全く無関係だった傭兵の一人と日本の大学院生の人生が交錯する時、物語は大きなうねりを生み出して行きます。
人類滅亡の危機となりうる「新種の生物」が何なのかは勘のいい方ならお分かりだと思いますが、その生物を通して私たち人類が生きるに値する生物かどうかが問いかけられる筋立てとなっています。
こう書くと陳腐なハリウッド映画のシナリオみたいなものに思われるかもしれませんが、今作はとにかく面白いです。
ホワイトハウスの内幕、内戦で無政府状態のコンゴでの激闘、東京で身の危険に晒されながらある創薬に邁進する大学院生が交互にダイナミックに描かれて行き、広げた大風呂敷も見事に回収されます。
圧倒的なスケール感で描かれるエンタテインメント小説で、自分がその年に読んだものの中でベストと言えるものでした。
ぜひ、ご一読を。
では、また。